交通事故の示談について

交通事故の被害者は加害者に損害賠償を請求することができます。この損害賠償の金額を当事者同士で話し合って決めるのが示談です。

交通事故における示談のメリット・デメリットについてご紹介します。

目次

示談の種類

示談には大きく分けて2つの種類があります。

  • 人身に対する示談
  • 物損に対する示談

人身に対する示談とは、の際に被害者の傷害に対する損害賠償の示談です。物損に対する示談とは、事故によって被害にあった車などモノに対する損害賠償の示談です。人身に対する損害賠償と、物損に対する損害賠償は別々に請求するので、示談する際も分けて行われるのが一般的です。

示談のメリット・デメリット

示談のメリット・デメリットは調停や裁判した場合と比較することで理解しやすくなると思います。

示談調停・裁判
メリット
  • 解決が早い
  • 費用が安い
  • 面倒が少ない
  • 適正な賠償額を得ることができる
  • 強制執行ができる
デメリット
  • 相手が納得しなければ成立しない
  • 専門家が間に入らないと後日トラブルが発生することもある
  • 時間がかかる
  • 費用がかかる
  • こちらの意見を立証するための証拠が必要になるなど、面倒が多い

示談交渉は誰と行うの?

損害賠償を請求する相手です。基本的には事故の加害者ですが、事故の内容によっては加害者が複数存在する場合もあります。加害者が業務中だったらその会社、借りた車だったら車の所有者など。

1人に請求することも可能ですが、加害者全員に分担して請求することも可能です。

加害者本人と交渉するわけではなく、基本的には加害者側の任意保険会社と交渉することになります。

代理人がきたら要注意

保険会社の代理人以外に、加害者の知人や友人、親戚といった人が示談交渉に来ることがありますが、本当に示談交渉の代理権があるか、加害者の委任状を持参しているかどうかを必ず確認するようにしましょう。

死亡事故の場合の示談交渉は誰がするの?

傷害事故、物損事故の場合は被害者、もしくは被害者から委任された弁護士などが示談交渉を行いますが、死亡事故の場合は被害者が亡くなっているので、示談交渉するのは被害者の相続人ということになります。

相続人が複数存在する場合は、交渉窓口を1人決めて交渉することが示談交渉成功のカギとなります。相続でモメている場合は全員で決めた弁護士など、第三者に依頼することをおすすめします。

示談交渉がはじまるタイミング

示談交渉が行われるタイミングは人身に対する示談と物損に対する示談で異なります。

人身に対する示談交渉がはじまるタイミング

人身に対する示談は、事故による怪我の治療が終わったタイミングか、後遺障害が残った場合は、後遺障害の等級が確定した段階で開始されます。

死亡事故に対する示談交渉がはじまるタイミング

死亡事故の示談は、亡くなった被害者の葬儀終了後1ヶ月、もしくは四十九日後に開始されることが一般的です。

物損に対する示談交渉がはじまるタイミング

物損に対する示談は、損害額が確定した段階で開始することができるので、人損に対する示談よりも早いタイミングで示談交渉をスタートすることができます。

示談交渉は誰がはじめるの?

基本的には加害者側の保険会社から示談の申し入れがあります。

保険会社が算定した損害賠償額が示談案として提示されます。

相手から申し入れがない場合は、こちらから損害賠償の請求を行います。

示談交渉には時効があるので注意!

交通事故の示談交渉には時効が存在します。

事故の日から3年以内に示談を成立させなければ損害の請求ができなくなります。

損害賠償請求だけでなく、自賠責保険や任意保険の被害者請求権も3年で消滅してしまいます。

とはいえ、焦って納得できない状態で示談する必要はありません。時効前に裁判所に申立てすることで時効を中断させることができます。

  • 事故発生、もしくは加害者を知ったときから3年
  • ひき逃げなどで加害者が不明な場合は事故発生から20年
  • 後遺障害が残った場合は日から3年

示談交渉時に被害者側で準備するものは?

交通事故証明書

事故の内容を証明する書類です。警察の中にある自動車安全運転センターで発行してもらいます。

診断書

怪我の内容、治療経過などを記載した書類です。医師に作成してもらいます。

診療費明細書

治療内容の費用の内訳などを記載した書類です。病院から発行してもらいます。

自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書

後遺障害の等級認定請求に必要な書類です。医師に作成してもらいます。

各種領収書

賠償請求の際に必要になる可能性があるので、事故の影響でかかった費用の領収書はすべてとっておくようにしましょう。

収入証明書

休業損害や逸失利益を計算する際に必要となるので収入を証明する書類です。サラリーマンや公務員であれば、勤務先が発行する給与証明書か、前年度分の源泉徴収票。事業主の場合は確定申告書や納税証明書となります。

相続人の場合は戸籍謄本

被害者が死亡した場合、賠償請求権は相続人に移ります。被害者との関係を証明するための書類として戸籍謄本が必要となります。

第三者に委任する場合は委任状

弁護士などの第三者に交渉を委任する場合は委任状が必要となります。

※必要書類は相手に渡す前に必ずコピーを取って手元に残すようにしましょう。

示談金の金額は誰がどのように決めるの?

示談金の金額は自由に決めることができます。とはいえ、それでは中々交渉がまとまらないので、事故の状況に応じて一定の決まりや基準があります。

事故の内容を基準に照らし合わせて示談金を決めます。

示談金とは損害賠償金です。損害賠償金は以下の項目に分かれており、それぞれ金額決定のための基準が存在します。

交通事故の示談金内訳

示談金を決定する基準は三つある

示談金を決める際に、各項目毎に基準となる金額があり、事故の内容や被害者の状況をその基準と照らし合わせて決定されます。ただし、基準が三つあるので、どの基準を元に算出されるかは被害者側と加害者側で交渉する必要があります。

自賠責保険基準任意保険基準裁判所・弁護士会基準の三つの基準があり、裁判所・弁護士会基準が最も高額で、自賠責保険基準が最も安いといわれています。加害者側の保険会社が提示してくる損害賠償額は任意保険基準の額以下である場合がほとんどなので、その提示額をいかに裁判所・弁護士会基準に近づけることができるかは交渉にかかっています。

示談成功とは、示談金の額を裁判所・弁護士会基準に近づけることと言っても過言ではないでしょう。

示談が成立したらやり直しはできない

基本的に加害者側の保険会社が提示してくる損害賠償額は裁判所・弁護士会基準よりも低いです。保険会社としてはなるべく保険金を少なくする方向で提案してくるので、しっかりと確認し、交渉していく必要があります。

示談が成立したらやり直しはできないので注意してください。

示談内容はここをチェック!

相手側から示談案が提示されたら、必ず以下の点をチェックし、一つでも当てはまるようであれば弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

  • 提示された損害賠償の意味や根拠がまったく理解できない
  • 過失割合の判断がおかしいと思う
  • 休業損害が認められない、もしくはその額が少なすぎる
  • 慰謝料の計算方法がおかしい、納得がいかない
  • 裁判所・弁護士会基準よりもあきらかに低い額
  • 逸失利益の計算がおかしい

示談の内容が適切かどうか判断できない場合

保険会社が提示してきた示談の内容が適切かどうかをご自身で判断することは正直難しいです。相手は保険会社ですから、示談交渉のプロです。なるべく賠償金を低くなるように交渉してくるので、こちらに有利な情報を自ら教えてくれるようなことはありません。損害賠償に関する知識をしっかり持った上で、納得できないことを一つ一つ交渉していく必要があります。

交渉する場合に、こちらの意見が正しいと認めさせるための資料や証拠の提示も必要になってきます。交通事故の被害にあった状態でこれらのことをすべて自分1人でこなすのは大変な労力です。怪我の治療をしながらとなったらなおさらです。

一番確実かつ損をしないやり方は早い段階で弁護士などの専門家に依頼することです。

弁護士に依頼することで、当初提示された示談額の倍以上を賠償金を得ることも多く、事故の内容によっては3倍、それ以上の増額が見込める場合もあります。

弁護士費用はかかりますが、結果として賠償金の増額が出来れば、金銭的にも精神的にも身体的にもこちらの方が大きなメリットとなります。示談金で精算できる弁護士も多いので、持ち出しなしで弁護士への依頼も可能です。

示談に応じるタイミングは?

示談は法律上の和解契約に当たります。示談に応じるにあたっては必ず示談書を作成するようにしましょう。

示談に応じるタイミングは、示談内容に納得したときです。やり直しはできませんので、必ず全部に納得した上で応じるようにしましょう。

示談書を作成して署名しますが、通常は保険会社が示談書を作成してくれます。相手が保険会社ではない場合は、作成する必要がありますが、あとで問題にならないよう弁護士などの専門家に依頼して作成してもらった方がいいでしょう。

加害者が示談を急いでも合わせる必要なし

加害者は、下記の3つの責任を負うことになります。

  • 行政上の責任:道路交通法に基づく反則金、免許停止・取り消しなど
  • 刑事上の責任:道路交通法に基づく懲役、禁錮、罰金など
  • 民事上の責任:損害賠償の支払い義務など

加害者が刑事責任を問われている場合、示談の有無は判決に大きな影響を与えます。被害者側と示談が成立している場合、刑が軽くなる可能性が高くなるため、刑事責任の判決前に示談成立をお願いしてくることがあります。

そういった事情を考慮して示談を早める必要はまったくありませんので、必ず納得のいく状態まで交渉を続けるようにしましょう。

治療費がないからといって早めに示談に応じるのはダメ

示談が成立しないと賠償金が支払われないから、早く示談金を受け取りたい一心で示談を成立させることがありますが、示談成立は必ず納得できる内容になってからでないとあとあと後悔することになります。

病院の治療費などは、加害者が加入している強制保険(自賠責保険)会社に直接請求することができます。

被害者請求という制度で傷害事故の場合は120万円まで請求可能です。ただ、請求するのにさまざまな書類が必要なのと、保険金が出るまでに1~3ヶ月ほどかかってしまうのであまり現実的ではありません。

保険金の一部を前払いしてもらえる「仮渡金」という制度があり、死亡の場合は290万、傷害事故の場合は入金期間10日以上で症状に応じて40万、20万、5万円となっています。

必要書類も少なく一週間程度で受け取ることができるのでこちらを利用するようにしましょう。

仮渡金以外にも、傷害事故の場合はすでに確定した治療費や休業損害を10万円単位で請求できる「内払金」という制度もあります。支払上限120万まで何度でも請求することができます。

示談交渉が決裂した場合

示談交渉が難航し合意にいたらない場合は、以下のような方法で示談成立を目指し、それでもダメな場合は最終的に法的手段を検討することになります。しかしながら、訴訟はかなりの時間と労力がかかるので、なるべく示談が成立するようにしたいところです。ご自身独りで交渉している場合などは、専門家への依頼も検討してみましょう。

相手が納得せざるを得ないような証拠をそろえて再度交渉する

反論できない証拠書類などをそろえて再度交渉にあたります。

ADR機関を利用して解決する

ADRとは、「裁判外紛争解決手順」のことで、訴訟前に第三者機関に間に入ってもらい仲裁してもらう制度のことをさします。

費用が無料で、訴訟よりも時間がかからないというメリットがありますが、相手に対する強制権がないので相手が応じない場合があります。

物損事故のように賠償額が小額になるケースは、弁護士に依頼するよりも経済的なメリットが大きいと言えます。

交通事故の場合は、「財団法人交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」があり、どちらも無料で相談することができます。

調停や訴訟など、裁判によって解決する

訴訟になった場合は、事故の内容によりますが、最低でも半年程度はかかると言われています。決着がつくまでは賠償金が入金されないので、その間の生活費などを用意する必要があります。

訴訟になった場合は、裁判所の判決か、和解によって解決することになりますが、多くの場合は和解によって解決されています。

通常の示談と裁判による和解は同じように思えますが、裁判における和解は約束内容を守らなかった場合に訴訟を経ることなくすぐに強制執行できるので、裁判外の示談・和解よりも拘束力が強いと言えます。

加害者が示談交渉に応じない場合

何だかんだ理由をつけて、示談交渉に応じない。もしくは連絡しても音信不通といった場合は、まず内容証明郵便にて損害賠償請求の通知を送りましょう。それでも、交渉に応じてくれない場合は最終的に訴訟によって解決することになります。弁護士に相談しましょう。

加害者が死亡した場合の示談交渉は誰と行うの?

加害者が死亡した場合、加害者が任意保険に加入していれば保険会社の担当と示談交渉し、損害賠償請求することができます。任意保険に加入していない場合は、賠償責任は加害者の相続人に移るので、相続人相手に損害賠償を請求することになります。

加害者に示談できる支払い能力がない場合

主に加害者が任意保険に入っていない場合などは、損害賠償額が決定したとしても加害者に支払い能力がないというケースがあります。もし加害者が業務中であれば、会社に請求することができます。また、借りた車の場合は所有者に請求することができます。

請求できる相手が加害者しかいない場合は以下のような方法で保険金を得ることができます。

加害者の強制保険(自賠責保険)から保険金を受け取る
  • 死亡の場合:3,000万円(上限)
  • 傷害の場合:120万円(上限)
  • 後遺障害が残った場合:75万~4,000万円(等級に応じて)
政府保障事業制度を利用する

加害者が強制保険(自賠責保険)にも加入していない場合や、ひき逃げなどで加害者が不明な場合は、自動車損害賠償保障法の政府保障事業制度を利用することで給付金を得ることができます。請求先は保険会社ですが、どの保険会社でもかまいません。給付額は強制保険と同じです。

  • 死亡の場合:3,000万円(上限)
  • 傷害の場合:120万円(上限)
  • 後遺障害が残った場合:75万~4,000万円(等級に応じて)
自分の任意保険から保険金を受け取る

被害者が任意保険に加入しおり、無保険者傷害保険などが含まれていた場合、自身の任意保険から保険金を受け取ることができます。

内容や支払い条件が各保険会社によって異なるので、ご自身が加入している任意保険の内容をしっかり確認するようにしましょう。

示談金が支払われない場合の備え

示談金が分割払いだったりした場合、示談書で成立した通りに示談金が支払われないケースも存在します。そういった場合の備えとして示談内容を公正証書にしておくと、強制執行が可能になります。

通常の示談書には強制執行の効力はありません。支払ってもらえない場合は示談書を証拠として裁判を起こし回収しなければなりません。

公正証書であれば、相手が違反した場合に裁判を起こすことなく、すぐに強制執行にて回収することができます。

示談金はいつ支払われるのか?

示談金は示談が成立して、示談書を作成してから入金されます。加害者が任意保険に加入している場合は、約2週間前後で一括して指定口座に振り込まれます。加害者が任意保険に加入しておらず、一括で支払う資金力がない場合は交渉によって分割での支払いになる場合もあります。